今回のメインテーマは、注目されている日本製品の韓国への輸出規制問題に対する国際社会の反応についてです。
7月に入ってすぐに安倍政権が適用した輸出規制商品の中には、IT向け製品に必要な「フッ素」などがあり、韓国に対して輸出規制をしたために韓国政府は強く反発しています。日本は、27の27か国に適用している貿易優遇処置国のリストから韓国を排除する決定をしました。
このように、日韓関係は戦後最悪な状態になりつつありますが、一方の韓国は、日本の輸出規制が自由貿易の原則に違反しているとして、「世界貿易機構(WTO)」に審査を要請し、スイス・ジュネーブで始まった理事会では、日本と韓国が半導体材料の対韓輸出規制を巡り議論することになりました。
そのような状況の中、両国がお互いに正当性を主張して加盟国に理解を求めることになりますが、ルール違反にあたるかどうかの議論は平行線に終わる見通しが強く、韓国は提訴の準備を進めており、安全保障上の適切な措置とする日本の主張が認められるかがポイントです。
しかし、日本の輸出規制に対する国際世論は相当に厳しく、日本では韓国への非難が激しいため、こうした海外の動向が報道されることはほとんどないわけです。だからこそ、客観的に何が起きているのかを知る必要がありそうです。
世界中の様々な言語で報道された記事を読んでいくと、国際世論が韓国の主張を支持しているというわけではなく、日本の対応を自由貿易の原則に違反するものだとして、厳しく非難している記事があったことがわかりました。
当初、海外メディアも事情を把握していなかったようですが、7月半ば頃から日本の処置を強く非難する記事や社説が次第に増えているように思います。そして、安倍政権が主張しているように、国際社会に説明するなら日本の立場は理解してもらえないことになると思われます。
なぜかと言えば、日本の立場に理解を示す記事は日本のメディアだけであるからです。いずれ日本は、国際社会の圧力に負け、方針転換せざるを得なくなるものと考えられます。「ブルームバーグ」の記事でも日本を痛烈に批判しているのがわかります。
「安倍晋三首相が韓国と始めた希望なき貿易戦争」
先日の参議院選で過半数を獲得した自民党の安倍首相は、まず韓国に対して始めたくだらない貿易戦争をやめる必要があります。ハイテク関連の輸出品が北朝鮮などに不法に渡らないようにする措置だと主張していますが、元徴用工を巡り日本企業に損害賠償の支払いを命じた韓国最高裁の判決への報復を意図したものであるのは明らかです。
両国とも、自国の主張からもはや逃れられなくなっており、日本側は1965年の日韓請求権協定で全ての問題は最終的に解決されたとの立場を取っていますが、韓国側は安倍政権が呼びかけた仲裁委員会の設置に応じず、両国企業の出資を柱とする提案を行っています。
日韓という同盟国の間に緊張が生じた際に、これまで仲介役を果たしてきたアメリカはほとんど何もしないため、このままでは対立がさらに大きくなる可能性があります。日本は韓国を貿易上の優遇措置適用国されるから除外するようになれば、輸出規制強化どころか、韓国経済がさらに厳しくなるのは明らかです。
結局、両国ともに不当と感じる理由があるわけですが、韓国の文在寅大統領が従軍慰安婦問題を巡り、どれだけ謝罪し補償しても足りる日は来ない、という論調を強めています。これに対しいぇ、安倍首相は政治問題の解決に貿易上の措置を使いましたが、トランプ大統領と中国が好む報復の戦略とかなり似ているのがわかります。
世界の貿易秩序強化で、1か月前まで自国開催のG20で喝采を浴びた安倍首相としては、偽善的であるように思います。最悪、この悪影響は安倍首相の評判を落とすだけではなく、日本企業が市場シェアを減らし、信頼性でも評判を落とすことになるものと思われます。
妥協策として考えられることは、日本が輸出規制強化をやめ、韓国も元徴用工問題で仲裁委員会の設置に応じるしかありません。そして、トランプ大統領が両国間の仲裁をし、保証しなければならないということです。
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