今後、弾劾裁判の準備が進み、トランプ大統領が窮地に立っていることが報道されているため、「Qアノン」の投稿は急激に増えています。
しかし、最近は内容には目新しいものはなく、現実に起こっている様々な出来事を中心にQアノンの世界観へと結び付けて解釈し、トランプと共にグローバリストや民主党、そして支配層を一掃するという革命運動に参加するようなメッセージが多くなっています。
このため、3月に入り、ネットメディアではアメリカ人としてできるだけ愛国者を集め、トランプ革命に参加するように促す動画がネット上で溢れるようになりました。とにかく、熱烈なトランプ支持者が増えているのは明らかです。
そのような状況の中、ネット上だけではなく、リアルの世界でもQアノンは注目されています。Qアノンの投稿をまとめた書籍が出版され、評価5つ星のベストセラーになりました。この本には特定の著者はいなく、Qアノンが好きな人々が集まってまとめた本と見られています。
価格は17ドル(約2,000円)ですが、かなり売れているようで、「トランプ革命」参加のためのパンフレットとしての機能もあり、本の売れ行きとともにトランプ支持者のさらなる拡大も期待されているように思います。
QAnon: An Invitation to The Great Awakening
このように、Qアノン現象はネット壌に限定されることなく、ベストセラー本となって現実の世界に浸透し始めており、インターネットにアクセスしていない層にもQアノンの世界観が拡散されています。
一方、Qアノンの世界観を頭から信じ込んだ人物による事件や事故も起きており、Qアノンの世界観を信じ、革命を主張する人々の数は確実に大きくなっています。いよいよエリート層の撲滅を主張し、実際に暴力事件を起こす人々が大勢も出てくる可能性もあるということです。
また、Qアノンの支持者は、既存の社会秩序を守る側にいる警察や米軍内にも拡大しており、それぞれユニフォームの胸に自前のQワッペンを付けている動画が拡散されていることからも、現役の将校もQアノンを支持し、その世界観を信奉する人々がいると考えられています。
さらに、Qアノンの運動は、最近ヨーロッパ全土にも拡大しており、ドイツで行われた地方選挙に関するツイートの多くに、Qアノンのハシュタグが付いた投稿やそれに関連したキーワードがハシュタグとして使われていました。
しかも、Qアノンに関連したハシュタグで投稿した人々のほとんどがドイツ人であり、それも若い世代ではなく、退職した中高年が中心であったことから、今後は選挙のたびに見られるようになっていくかもしれません。
このような現象は、フランスでも見られており、マクロン政権に抗議する「黄色いベスト運動」に関連するツイートにも、Qアノンのハッシュタグキーワードが見受けられています。すでにQアノンの世界観は大西洋を越え、ヨーロッパに拡散しつつあり、世界の極右思想を結ぶ共通の思想になりつつあります。
他方、Qアノンの世界観に支持されたトランプ陣営とは異なり、弾劾裁判を準備しているアメリカ民主党には社会民主主義者を名乗る左派の候補が目立ちつつありますが、未だに所得の再分配を主張する社会民主主義的な政策を支持しないという古い体質の民主党員も多く、民主党は一本化できていません。
これに対してトランプ陣営は、トランプが窮地に追い込まれれば追い込まれるほどQアノン支持者が結集し、むしろ支持率が上昇しています。Qアノンはトランプの支持を盤石にしているということです。
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