ホーム > すべての「人」へ、今、起きている本当のことをあなたに 軍事的緊張が高まっているアメリカとロシアの関係①
|
今回のメインテーマは、軍事的緊張が高まっているアメリカとロシアの関係についてです。最近の欧米のマスメディアの報道では、米中貿易戦争の成り行きに注目が集まっています。
5月に交渉が妥結し、相互に課していた関税が撤廃されると見られていましたが、5月10日にトランプ大統領は中国に課していた2500億ドル相当の輸入品への関税を、10%から25%に引き上げると決めました。
これは、有利な結果を導くためのトランプ大統領の戦略ではないかと思われていましたが、世界経済の今後に大きな影響を与えるだけに、日本を含め世界中のマスメディアの報道の焦点になりつつあります。
そのような状況の中、急速に悪化しているのがアメリカとロシアとの関係です。アメリカとロシアの関係はここ数年で急激に悪化し、軍事的緊張状態が続いています。ソチ・オリンピック終了後の2014年にはロシアがクリミア半島を併合し、2015年にはロシア軍によるアサド政権支援で、アメリカとの関係の緊張は頂点に達し、両者の衝突さえ懸念させました。
また、2016年にはローマ法王フランシスコが第3次世界大戦を懸念するほど軍事的緊張が高まっていました。さらに、ロシアに敵対的であったヒラリー・クリントンが2017年にアメリカ大統領になっていたら、シリア全土を飛行禁止区域にすることで、米軍機とロシア軍機がシリア上空で戦闘状態になっていた可能性もあったとされています。
そうした状況にあっても、ロシアに比較的に親和的なトランプ政権の誕生によって、2017年からは両国の軍事的緊張は一時的に小康状態になり、和平とまではいかなくても、両国の対話が可能な状況になっていました。
ところが、2019年に入り、どこかのタイミングで両国の軍事的衝突が懸念される状況になりつつあります。例えば、両国の関係が緊張している地域として南米のベネズエラがあります。現在、ベネズエラでは経済を混乱させたマドゥロ政権とアメリカが支援している暫定大統領ホワン・グアイドが対立し、両者の間で緊張が続いています。
アメリカNSC(国家安全保障会議)によると、4月30日のクーデターはトランプ政権が計画し、実行したとされています。しかし、ベネズエラ軍はマドゥロ大統領の元に結集し、アメリカが計画したグアイドのクーデターは実質的に失敗したようです。
ベネズエラ軍がマドゥロ政権から離反しなかった理由として考えられるのは、ロシアの支援であることは間違いなさそうです。実際に、旅客機のイリューシンと軍輸送機のアントノフの2機がベネズエラ軍の空軍基地に着陸した中に100人ほどのロシア軍人が乗っていたとされています。
これらロシア軍人は、サイバー・セキュリティー部隊であり、マドゥロ政権転覆の一環としてアメリカがベネズエラの通信網や発電所などのインフラを攻撃することを防止するために派遣されたのではないかと見られています。
ベネズエラの外務次官は、ロシア軍の兵員がさらにベネズエラに派遣される可能性を否定せず、ロシア軍が必要な期間ベネズエラに駐留するとも公表しています。さらに、ロシア軍部隊には、ロシア特殊作戦軍(SOF)が含まれており、クリミア半島併合時には戦闘行為を回避して地元のウクライナ軍部隊を無力化し、戦略的なインフラと施設を完全に掌握したと報道されています。
さらに、シリアのアレッポ攻略とパルミラでのイスラム系テロ集団IS掃討作戦に参加し、大きな成果を上げており、SOFの存在なくしてはクリミア半島やシリアでの成功はなかったといわれるほどの最精鋭部隊と認知されています。
このSOFがベネズエラに駐留しベネズエラ軍を全面的にバックアップしているということからも、ロシアからの実質的な支援があるからこそベネズエラ軍はマドゥロ大統領の支持へと結束したものと思われます。
一方、こうしたロシアの動きに対して、トランプ大統領はベネズエラからの撤収を要求し、記者団に対し「全ての選択肢がある」と強調して、マドゥロ政権を転覆するためには軍事力の使用のあり得ることを匂わせています。
報道を見ると、国連人権委員会の特別報告者で、ベネズエラ情勢専門の弁護士アルフレッド・デ・ゼイヤスは、トランプ政権はクーデターに失敗したので、マドゥロ大統領の殺害計画もあり得るとして警告しています。
3月には、ベネズエラの隣国であるコロンビアに5000名規模のアメリカの特殊部隊が待機していると報道されており、ベネズエラに侵攻するようなことになれば、これを阻止するロシアの特殊部隊にバックアップされたベネズエラ軍との間で軍事的に緊張した状況にもなるかもしれません。
ベネズエラを巡るこうしたアメリカとロシアの緊張はさらに高まっており、どんな状況になってもおかしくない情勢であることは明らかです。 | ||
すべての「人」へ、今、起こっている |