Ages of Discord: A Structural-Demographic Analysis of American History (English Edition)
(出典:Amazon)
今、私が情報リテラシー研究で注目していることは、近代以前に存在していた歴史のパターンとサイクルがアメリカや中国などにも適用可能になり、いつまでに分裂と崩壊が起きるのかです。
実は、「18世紀から現在までのアメリカ国内の政治的不安定性のダイナミズム」という論文が、3年前に出版されました。本のタイトルは、Ages of Discord(不一致の時代)です。著者のPeter Turchinは、アメリカ独立宣言後から暴動や騒乱などが発生するパターンがあるのかどうか研究しています。
アメリカでは、農業国から近代的な工業国に移行した19世紀後半から戦後(1945年)まで、社会的に不安定なサイクルがあったことがわかりました。特に、現在のような抗議運動や暴動が起こり、南北戦争のような戦争を除けば、アメリカ国内で暴動が多発した時期が3回あります。
1回目が1870年代です。2回目が1920年代で、3回目が1980年代、そして4回目が今年2020年ということになります。正しく歴史を振り返ってみると、抗議運動や暴動の回数が多いことは明らかです。
アメリカで4回も社会的に不安定に至った原因は、近代の工業国家は経済成長のスピードが極端に速く、人口の増加と労働賃金の低下や生活水準の低下、そしてエリート層(政治家や官僚)のポスト不足などに対処できなかったからです。
5分でわかるアラブの春!原因やジャスミン革命などをわかりやすく解説!
(出典:2018年2月2日 ホンシェルジュ)
近年、イスラム圏諸国で起きたいわゆる「アラブの春(カラー革命)」では、例えばエジプトは年5%以上の経済成長率を維持していました。しかし、出生率は一家族当たり2.8と高く、生活水準も高かったことから高等教育を受ける若者の人口が増えてしまいました。
つまり、経済成長による仕事の需要が高等教育を受けた若者の増加スピードに追いつくことができず、結果として高い教育を受けた若年層の高い失業率が慢性化したというわけです。これが、「アラブの春」と政治運動を引き起こす直接的な背景になりました。
エジプトと似たような状況になっているのがアメリカです。通常、人口数と高学歴者の数が増えたとしても、高い経済成長率が維持され、生活水準が高まり、高学歴者の雇用数が増える限り、社会は安定した状態になります。
現在のアメリカのように、抗議運動や暴動に発展するようなことはありません。どんな人でも努力さえすれば、社会階層の上昇が期待できるというわけです。しかし、格差が固定化されて政治や経済のシステムが一部の特権階級に独占された状況になると、経済が成長していたとしても社会階層の上昇は保証されなくなります。
安倍政権の6年間で大企業役員・富裕層の富は倍増、労働者には過労死・賃下げ・貧困・家計25万円マイナス
(出典:2019年7月21日 editor)
この8年にも及ぶ安倍政権下の日本でも見られていますが、経済格差と社会階層は固定化される傾向があり、たとえ高等教育を受けていたとしても期待した仕事は得られないことになるのは誰の目にも明らかです。
このような状況が臨界点に達すると、家庭内や職場などで暴力行為が頻発し、様々な場所で抗議運動や暴動、脅迫などが起きるということです。そして、今回の新型コロナウイルスの蔓延によって、社会不安が広がっています。
特に、アメリカの政治家(共和党、民主党の両方)たちはトランプ大統領を筆頭に、自己中心的で意図的に分断を仕掛けているために、11月のアメリカ大統領選挙前後には国内で2つに分裂してしまう可能性があります。
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