アメリカを覆う陰謀論「Q」とは?トランプも手を焼く聖典の中身
今回で4話目になりますが、引き続き、アメリカ国内で支持者が増え続けている「Qアノン」の政治運動化と、それに伴う暴力行為についてお伝えしていきます。
2020年11月のアメリカ大統領選挙と下院議会選挙の共和党候補予備選挙の4名の候補者が「Qアノン」の支持を表明していることが明らかになりました。「Qアノン」の影響力は表向きだけではなく、実は暴力的な行為に走る人々も現れています。
いずれにしても、彼らは狂信的なトランプ支持者であり、例えば、ネバダ州では「Qアノン」が主張するFBIによるヒラリー・クリントンの極秘捜査のファイルの公開を求め、自動小銃で武装してトラックに籠城し、交通を遮断する事件が起きています。
また、ニューヨークのマフィアのボスが射殺された事件では、自分がトランプ大統領の特別な保護を受ていると信じ込み、マフィアのボスがトランプ大統領に敵対していると信じたのが殺害した動機であったことがわかっています。
マフィアのボスを殺害した犯人、止まらぬ妄想と陰謀論「俺はトランプの自警団」
彼らの共通点として、「Q」のロゴが入った服を着ていたり、手文字で「Qアノン」の支持者であることを示しているようです。このように、「Qアノン」は、すでにネット上を枠を越えた現象になっているわけです。
彼らは、トランプ大統領をアメリカを国民の手に取り戻す社会的リーダーとして認識しており、それが政治運動化しているということです。最初は、ネットの掲示板の書き込みに過ぎなかったものが、トランプ大統領の狂信的な支持層として過激な革命思想を持ってしまったわけです。
その結果、暴力行為を誘発するようになり、2020年は大統領選挙の年ということで、「Qアノン」現象の影響力は次第に大きくなっています。この動きこそ、今後のアメリカ社会に大きな影響を与える可能性は大きいと思われます。
そのような状況の中、「Qアノン」の影響に警告をしているのが、司法省に属するアメリカ合衆国の警察機関の「FBI(連邦捜査局」です。国内の治安維持を担い、テロやスパイ、政府の汚職、複数の州に渡る広域事件、強盗事件などの捜査を担当しています。
FBIの報告書では、「Qアノン」の信奉者が国内で反政府テロを引き起こす可能性が高いとし、注意を促しています。報告書では、全米に「ニューワールド・オーダー(新世界秩序)」と「ペドフィリア(小児性愛者)」の存在を世に知らしめるために、爆弾テロを起こそうとした者を逮捕した、とされてます。
FBI Calls Q Anon Believers a Domestic Terrorism Threat
当然、「Qアノン」に正当性を与えているのがトランプ大統領であることから、本人は「Qアノン」に関連したことについて何度かツイートしたことがあります。例えば、「オバマ前大統領はアメリカ生まれではないので、大統領になる資格はなかった」「子供用のワクチンの接種で自閉症になる」「地球温暖化は存在しない」などです。
問題は、トランプ大統領自身がその情報の妥当性を肯定する発言をしていることです。だから、「Qアノン」が発信する内容の信憑性が高くなり、それを信じる者が増えるということになります。
結局、「Qアノン」が投稿した内容と、トランプ大統領に期待が集まる一連の動きが、一種の政治運動であるなら、それはアメリカの政党がリベラル(米民主党)や保守(共和党)だけではなく、第3の政党が誕生する可能性があるということです。
また、マスメディアが報道しているように、トランプ政権の誕生によって噴出した白人至上主義や反ユダヤ主義などでもない「Qアノン」の思想は、「反エリート主義」であるものと考えられます。それは、世界政府が支配する社会主義的な「ニューワールド・オーダー(新世界秩序)」に反対する「陰謀論」であるわけです。
「Qアノン」現象では、この「陰謀論」を信じる人々が増え続け、政治勢力となってトランプ大統領の支持層として存在していることはもはや否定できなくなっています。いよいよ、ターニング・イヤーである2020年が目の前に迫ってきています。
もはやインターネット空間と現実空間という対立軸など成立しなくなりつつあり、ネットで投稿された内容に注目が集まり、それが高まるとそれがどんなにあり得ないことでも現実化することになっていくと思います。
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