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今回のメインテーマは、イスラム系テロ集団IS(イスラム国)の最高指導者、バグダディのことと今後のシリア情勢の展開についてです。
10月末、トランプ大統領はISの最高指導者バグダディ容疑者が、シリア北西部のトルコとの国境近くの村で死亡したと発表しました。
バグダディ容疑者は、米軍特殊部隊が夜間にヘリコプターで潜伏先の建物を急襲すると、トンネルの内部に逃げ込み、軍用犬に追い詰められ、着用していた自爆用ベストを爆発させて死亡したとされています。この爆発で、バグダディの息子3人も死亡したようです。
今回の米軍の作戦は、2年以上前から計画されたものであり、アメリカの諜報機関CIAやイラク、トルコ、そしてクルド人勢力などの複数の情報機関の協力で実現したと言われています。
また、今回の作戦ではロシアも米軍特殊部隊にロシア軍の空域の飛行許可を与え、作戦に間接的に協力しています。ロシア国防省は、バグダディの殺害はまだ確認できていないとしながらも、殺害が事実であれば歓迎する、という肯定的な声明を出しています。
このような状況の中、作戦自体がトルコ、クルド、イラク、ロシア、そしてアメリカなどがが合意に基づいて実施された作戦である可能性が高いと思われます。アメリカ単独の作戦ではないということは、バグダディ殺害作戦の裏には、シリアの将来に関する裏の合意があったということです。
これがどのような合意なのか理解するためには、今回の殺害に至る一連の経緯を確認する必要があります。まず10月初旬、トランプ大統領はシリア北東部のクルド人勢力の支配地域から、約2000名の米軍特殊部隊の撤退を決定しています。
それまで、米軍特殊部隊はISの掃討作戦でクルド人勢力を支援していました。米軍撤退後、すぐにトルコ軍がクルド人支配地域に侵攻し、南北100キロ、東西30キロに及ぶ安全地帯をトルコとの国境に設置し、そこにトルコに避難しているシリア難民を帰還させようとしました。
ところが、クルド人勢力はトルコの提案に反発し、双方の間で軍事的な衝突が始まりました。アメリカやドイツ、フランスはトルコを非難し、経済制裁や武器の禁輸処置の発動を警告しましたが、トルコのエルドアン大統領はシリアからの撤退を拒否しています。
数週間後、ロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領は、ロシア南部のソチで首脳会談を行い、シリア北東部からのクルド人撤退と安全地帯の設置に合意し、ロシア軍とトルコ軍は共同で国境地帯をパトロールすることになりました。
一方、トランプ大統領は米軍特殊部隊の約1000名をシリア東部の油田地帯に派遣し、油田をISの支配から守っています。しかし、ロシア国防省はシリアの油田はシリアのものだと反発しています。
他方、クルド人勢力は国境地帯から撤収を完了し、トルコ軍も攻撃を中止しています。そして、10月29日にISの最高指導者バグダディが海軍特殊部隊によって殺害され、それをトルコやイラク、クルド人勢力、そしてロシアが協力したことを発表しました。
こうした出来事とそのタイミングを分析していくと、バグダディの殺害はトランプ政権による米軍特殊部隊撤退発表から始まった一連の動きを完結させる出来事であったことがわかります。
トランプ政権がシリア北東部からの米軍の撤退を発表した際に、ISの掃討作戦で協力していたクルド人勢力を見捨てたことは、国内外で強く非難されています。ここでもまた、マスメディアは国際情勢に無知なトランプ大統領というレッテルを貼りつけ、話をすり替えているのは明らかです。
しかし、一連の出来事は偶然に発生したものとは考えにくく、徹底的に準備され、計画されたものである可能性が高いと思われます。
また、バグダディが殺害されたことで、トランプ大統領が米軍のシリア撤退を決定した10月上旬には、アメリカ、トルコ、ロシア、イラクの間でシリアの将来について最終的な合意がすでに成立していた可能性があります。この4か国での合意には、クルド人勢力の一部も関与していたと思われます。
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