アメリカやトルコ、ロシア、そしてクルド人勢力というのは、中東ではお互いに複雑な対立関係にあります。
そうした対立関係があるにもかかわらず、隠れた合意と計画があるのなら、私たちはバグダディという人物が一体何者であるのかを知る必要があります。そして、ようやくイスラム系テロ集団IS(イスラム国)という組織の本来の姿が見えてくるわけです。
最近、マスメディアからほとんど報道されなくなったISですが、2014年頃は毎日のように報道記事が書かれていました。その報道記事の多くに、バグダディはイラクの首都バグダッドにあるイスラム大学の講師をしており、イスラム学を教えていたとあります。
当然、この時はテロリストではなかったわけですが、何らかの理由で米軍に逮捕され、イラク南部の収容所に収監されたと言われています。期間は10ヵ月ほど収監されていましたが、イラク戦争時の2005年頃から数年間、再度逮捕され、同じ収容所に収監されていたことがわかっています。
報道記事には、バグダディが米軍の収容所に収監されている際に、同じく収監されていたアルカイダ系のテロリスト集団やサダム・フセイン政権の軍の高官と接触し、次第にイスラム原理主義の思想に感化され、過激なテロを支持するようになったとされています。
そして収容所から釈放されると、すぐに、イラクのイスラム国に参加し、イラク国内のテロを引き起こした後、2011年にはアサド政権の反政府勢力としてシリアに侵入し、現在のISの基礎を築いたようです。
これが一般的に、アメリカのマスメディアで公表されているストーリーです。しかし、これとは異なる中東諸国の大手新聞社やネットメディアからの報道記事も多くあります。
例えば、バーレーンの大手新聞社は、元NSA局員で、極秘情報をリークしてロシアに滞在しているエドワード・スノーデンは、「ISはイスラエルとアメリカ、イギリスの情報機関が作った組織であり、バグダディはイスラエルのモサドの軍事訓練とイスラム神学の集中的な訓練を受けたとする文書がNSAにあると証言している」、と報じています。
「イスラム国」はイルミナティがつくった!? スノーデンが指摘する「スズメバチの巣」とは?
日本のネットメディアの記事にもあるように、「ホーネットの巣」と呼ばれる作戦名で実施されたというこのスノーデンの暴露には十分な根拠があります。
2003年、アメリカがイラクを侵略した時、フセイン政権を崩壊させたことで、一見アメリカが勝利したかのように見えましたが、すぐにイラク全土で宗派間対立の内戦状態になったことはあまり知られていません。
そして、この混乱状態を利用して勢力を拡大したのが隣国「イラン」であるということです。フセイン政権のバース党復活を恐れたアメリカは、対立していたシーア派の政治勢力を支援したことで、イラクのシーア派武装勢力も大きく勢力を伸ばしています。
このような状況の中、シーア派の総本山である「イラン」にとって、さらに影響力をイラク国内に拡大する機会を得たことで、イラクのシーア派のマリキ政権はイランの政治的な影響力の支配下に入り、多くの復興プロジェクトがイランの援助によって進められるようになったわけです。
また、イランのこのような影響力拡大は、イランが支援するシーア派武装勢力「ヒズボラ」もイラク国内で勢力を伸ばし始めています。
イランは反米国家であることから、イランの勢力拡大を懸念した当時のブッシュ政権は、イランとヒズボラに敵対し、この勢力を抑止できるスンニ派の原理主義武装勢力を支援することになりました。
結局、バグダディはイラク南部の収容所に収監されていた時、同じく収監されていたアルカイダ系のテロリスト集団やサダム・フセイン政権の軍の高官と接触し、次第にイスラム原理主義の思想に感化さていた時期であることがわかります。
この米軍の収容所こそ、ブッシュ政権の方針に従い、米軍やCIAが後にISの幹部となる人物たちを大量にリクルートし、また訓練していた施設であった可能性があります。つまり、米軍自体がテロ組織ISをつくったということです。
|