前回の続きですが、アメリカがシリアにあるIS(イスラム国)に資金を提供し、ISの戦闘要員をヨルダン国内にある米軍の基地で訓練していた事実が報道されています。
アメリカは、シリアのアサド政権の打倒を目標にしているため、シリアの反政府勢力を支援していますが、ISは反政府勢力の一部であるため、ISにもアメリカの資金が提供されていたという説明となっています。
しかし、2015年頃にISの世界的な脅威がピークになり、アメリカ中心の有志連合によるISのシリアの拠点に空爆が行われている時、資金提供が行われているはずはないと考えるかもしれません。
つまり、資金提供はISがまだ小さな組織で、シリアのアサド政権を打倒するための反政府勢力としてアメリカにとって価値があった時期の一時的なことであった可能性があります。ところが、ISがアサド政権を越える脅威となった現在、資金提供が行われているとは到底考えることはできないはずです。
ただ、これを打ち消すニュースが相次いで報道されました。2015年、パキスタンでユーサフ・アル・サラフィという人物が逮捕されましたが、サラフィはパキスタンにあるISの司令官であったことが明らかになりました。
サラフィは、フランスの通信社AFPのインタビューに対して、ISへの参加を希望し、現在でもシリアに入国してくる戦闘員希望者には、一人当たり600ドルの資金をアメリカが提供していると証言しています。
そして、トランプ側ではない軍産複合体側(ディープステート)は、現在でもISを支援し続けていることがわかっています。スンニ派のイスラム原理主義のテロ組織を支援し、イランが支援しているシーア派系の原理主義組織を牽制するとした2005年頃に打ち出したブッシュ政権時の方針は、現在でも生きていることになります。
その他、ドイツの国際報道事業体ドイチェ・ベレは、トルコから多くの日用品や軍需物資が国境を越えてシリアにあるISの支配地域に何度も輸送されていることを報じています。国境には検問所はなく、ノーチェックであったことを伝えています。
現在のところ、トルコはNATOの加盟国であり、アメリカの同盟国でもあります。トルコ国境を越えてシリアにあるISの支配地域へ物資が運ばれているということは、トランプ政権ではなく、軍産複合体の支援にトルコも全面的に協力していることになります。
このように、2015年頃の報道記事を読んでいると、バグダディという人物の素性とISというテロ組織の実態が明らかになってきます。
つまり、バグダディはブッシュ政権のシーア派に対抗できるスンニ派武装組織を構成する必要から指導者として米軍の収容所で軍事教育を受けた可能性があり、ISはアメリカ、トルコ、イスラエル、サウジアラビアなどの国々が自らの利害と目的を実現するために利用する都合のよいツールであったということです。
各国は、それぞれの目的でISにテロを起こさせることに利用しています。例えば、「アメリカ」と「サウジアラビア」、「カタール」は石油と天然ガスをシリアを経由して南ヨーロッパに運び、ヨーロッパのエネルギー覇権を確立する計画を持っていました。
この計画に反対するシリアのアサド政権を打倒し、親米政権の樹立を画策していたわけです。最高指導者バグダディが率いるISは、単にアサド政権を打倒する都合のよいツールであったことがわかります。
そして、シリア内戦で膨大な数の難民がトルコに流れ込みましたが、「トルコ」にとって政治的、経済的に大きな負担になっていました。この状況を変えるためには、アサド政権が崩壊して新たな政権になり、内戦が終結するしかなかったように考えられます。
また、トルコにとっての最大の脅威はトルコ、イラン、シリアの3か国に居住するクルド人勢力の存在です。シリアでISの支配力が拡大すると、クルド人と対立してトルコはISを利用してクルド人勢力を抑制することができました。
さらに、「イスラエル」には中東の強力な独裁国家を全て崩壊させ、中東地域でイスラエルに挑戦する力のない国に分割するという計画を持っています。シリアのアサド政権は、反イスラエルの独裁国家であり、これを打倒するためにはISが都合の良いツールとなっています。
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