東洋経済が新型コロナ「実効再生産数」を公開
(出典:2020年5月22日 東洋経済Online)
いよいよ世界各国で都市封鎖や行動規制の解除が段階的に始まり、経済活動が再開される状況になりつつあります。日本も含め、各国政府が規制解除の根拠にしているのが「集団クラスターの数値」です。
つまり、一人の人間が何人の人間に感染させるかを表した数値で、「1.0」を下回ると感染は収束に向かうと考えられています。これは、一人が感染させる人数が一人以下であるということで、世界的に低下しているということです。
世界各国の新型コロナ対策、明暗分かれた原因は?
(出典:2020年5月10日 National Geographic)
現在、ほとんどの国で集団クラスターの数値(実効再生産数)が1.0を下回っています。新型コロナウイルスの蔓延が収束する方向に向かっていることがわかります。ところが、その他の数値を見ると各国で状況が異なっていることも事実です。
特に、1日当たりの感染者の増加人数と致死率、そして回復率ですが、ほぼ完全な抑え込みに成功したとされる中国と韓国の数値を見ると、「感染拡大の収束」というのはどのような状況なのかがはっきりしてきました。
要するに、1日の感染者の増加人数が大幅に減少すると同時に、回復率が90%近くになり、入院患者数も大きく減少するいった状況であるというわけです。こうした傾向は致死率の減少にも見られます。
中国や韓国のように極端な例で説明しなくても、回復率が50%を越えて上昇傾向に向かう時点で、収束へ向かっていると言えると思われます。
一方、集団免疫の獲得を目指して感染拡大の対応が遅れたイギリス、そして都市封鎖の対応が遅かったイタリアやアメリカでは、1日あたりの感染者数の増加は1000人を越えているにも関わらず、回復率は低く、致死率は高いという国もあります。
Sweden resisted a lockdown, and its capital Stockholm is expected to reach ‘herd immunity’ in weeks
(出典:2020年4月28日 CNBC)
未だに致死率が10%を上回る、スウェーデンのような集団免疫の獲得を目標としてきた国では、積極的に都市封鎖や行動規制を実施してこなかったわけです。感染者数の増加人数は1000人を超えていませんが、致死率は13%もあります。
スウェーデンでは、約10人に1人が新型コロナウイルスが原因で命を落としている現状があります。そのほとんどが持病持ちか高齢者となっています。ちなみに、インフルエンザの平均的な致死率は0.1%しかありません。
また、2003年に中国広東省で発生したSARSウイルスの致死率は3.6%とされています。世界各国と比べて全ての数値が低い「不思議な国」と呼ばれる日本であっても、致死率はSARSの時を越えています。
このような状況の中、新型コロナウイルスの致死率が比較的高いことが明らかになり、特に集団免疫の獲得目指して厳格な行動規制をしなかったスウェーデンのような国は、致死率が異常に高く、回復率が低いことが明らかになりました。
ただし、現段階ではスウェーデンの「集団免疫策」は、失敗であったどうかはまだわかりません。11月頃になると北半球全域で低温低湿になり、第二波が同時に襲ってくると思われますが、その時こそ本当のことが明らかになると考えられます。
新型コロナ、各国で異なる「出口戦略」 4つの方向性
(出典:2020年5月21日 日本経済新聞)
さて、世界各国では集団クラスター数値が1.0を下回り、いよいよ行動規制を緩和して経済活動を再開しようとしています。1日当たりの感染数も減少し、回復率が上昇している日本は段階的に行動規制を解除し、経済活動を再開することになると思われます。
しかし、イギリスやアメリカ、スウェーデンのような未だに感染者数が増加しており、回復率が低く、致死率も高止まりしている国では、集団クラスター数値の低下だけで経済活動を再開すると、再び感染爆発が始まる可能性があるということです。
他方、中国や韓国でも経済活動を再開した数日後、落ち着いてた感染者数が増え始め、ソウルの梨泰院(イテウォン:米軍基地近く)にあるナイトクラブで発生した集団感染は100人を越え、中国の武漢でも新たな感染者が発見されています。
結局、新型コロナウイルスは感染力が強く、コントロールするのが極めて困難なウイルスであることが再確認されたことになります。
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