アフガニスタン米軍撤退延長検討 タリバン“受け入れられず”
(出典:2021年8月24日 NHK NEWS WEB)
タリバンが支配するアフガニスタン全土では、様々な混乱が起きています。それでも、タリバンを支持するネットワークの存在とその役割は大きく、大規模な組織体制でアフガニスタン全土に存在しているわけです。
タリバンのネットワークに所属している人々について知るためには、アフガニスタンの民族構成を分析する必要があります。欧米メディアの誤った報道によって、タリバンはアルカイダやISのようなイスラム系テロ集団のイメージがありますが、タリバンはイスラム原理主義による世界変革を目標にしたテロリスト集団では全くありません。
実際に、「自由が奪われる」「戦闘員の妻にされる」といった、アフガニスタン人女性たちの悲痛な声が欧米メディアで報道されていますが、ジャーナリストが直接確認した情報はなく、現地の人々から聞いた話ばかりなのが現状です。
アメリカやイギリスを中心に、2001年以降にアフガニスタン戦争に参加した諸外国は、これから軍事介入が失敗したことの責任を問われることになります。ところが、その責任を追及しようとする政治家やジャーナリストたちは情報の事実を確認しません。
現在でも、イスラムに関する偏見は西側諸国で強く、「戦闘員の妻にされる」などの情報はおそらくISのイメージで欧米メディアが演出しているからです。
国連安保理アフガニスタンめぐり緊急会合 人道状況に懸念表明
(出典:2021年8月17日 NHK NEWS WEB)
8月16日に国連安保理が緊急招集されましたが、アメリカやイギリス、フランスなどはタリバンの人権侵害を非難し、女性と子どもの人権状況を監視しなければならないと訴えています。
そもそも、20年前にアフガニスタンに対して一方的に戦争を仕掛けたこれらの国は、戦争で市民に多くの犠牲者を出しておきながら、女性と子どもの人権擁護を訴える資格がないのは明らかです。
話を民族構成に戻しますが、オスマントルコ時代には現在の北アフリカから中東の一帯は「レバント」と呼ばれていました。ちなみに、ISはそのレバントを統治するカリフ国家を建設することを目指していました。
だから、DSが米軍に指示してメンバーを教育し、北アフリカから中東全域の国家を攻撃して地域全体を流動化させました。つまり、国家を解体しようとしたわけです。これこそ、国際的なテロリズムを誘発する動機であったということです。
しかし、タリバンにはそのような世界戦略はなく、パシュトゥン人を中心に公用語のパシュトー語やダリー語を話、タジク人やハザラ人、そしてウズベク人などの民族に分かれて特定地域で暮らしているだけです。
アフガニスタンは多民族国家で、地域コミュニティーの秩序は民族ごとで管理しています。パシュトゥン人は、アフガニスタン全人口の約半数を占めており、タリバンの基本的な支持基盤であり、その支持層のネットワークが全土に広がっています。
タリバンは、数年前から米軍の撤退に備え、主要都市で政府や軍幹部と頻繁に会っていました。タリバンが目指すのは、「アフガニスタン・イスラム首長国の建国」です。 19世紀にはイギリスの保護国となったアフガニスタンですが、それ以前は独立国でした。
なぜ今復権?今さら聞けない「タリバン」の超基本
(出典:2021年8月20日 東洋経済ONLINE)
1926年、イギリスの支配から独立してアフガニスタン王国となり、ザーヒル・シャーが王位を継承しています。そして1963年、シャーは立憲君主制を導入して民主化を導入し、先進国との貿易などから経済成長が始まりました。
その時、アフガニスタンの各地域ではそれぞれの民族ごとに自治権を持つ連邦国家でした。当然、政治・経済活動も各民族の部族に委ねられ、イスラム法に基づく伝統的な統治がなされていたとされています。
ところが、1973年にクーデターが起こり、王政が廃止されて共和制となり、さらに社会主義革命が起こって社会主義政権が始まりました。国名を「アフガニスタン民主共和国」に変更し、近代的な教育を受けたエリート層を中心に伝統的なイスラムの統治に強く反発したわけです。
彼らのような社会主義者は、イスラム法や部族社会の統治がアフガニスタンの近代化を遅らせたと考えていました。アフガニスタンを発展させるためにイスラム法を撤廃し、各地域の部族から自治権を剥奪しました。
そして、社会主義政権による中央集権の統治が始まりました。それに対して、アフガニスタン全土でイスラムの秩序を取り戻すことを目的にした戦士「ムジャヒディン」が立ち上がり、政情は一気に不安定化していきました。
タリバンとは何者か、なぜ恐れられるのか
(出典:2021年8月20日 Newsweek)
私たちが『ランボーⅡ』などハリウッド映画を通して知っているアフガニスタンは、社会主義政権を支援するためにソ連軍が介入したアフガニスタン紛争時代です。当時のアメリカは、ソ連を弱体化させるためムジャヒディンを軍事的に支援しており、『ランボーⅡ』の中でタリバンは英雄として描かれています。
1989年、ついにソ連がアフガニスタンから撤退しましたが、2年後の1991年にソ連邦は崩壊しています。その後、アフガニスタンは民族間の覇権争いから内戦が勃発し混乱状態となり、1996年にタリバンが「アフガニスタン・イスラム首長国」を建国しました。
2002年に米軍が侵攻してくる前までは、イスラム法のシャリーアによる統治、女性や子どもへの抑圧、そしてパシュトゥン人が優遇されるなど、強権的であったことは明らかです。
さらに、国際テロ組織アルカイダに本拠地を提供し、2001年9月11日にオサマ・ビン・ラディンがアメリカ同時多発テロを引き起こしたという流れになっています。
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