タリバン、数週間内に政権枠組み 融和姿勢も国内外から懸念
(出典:2021年8月22日 毎日新聞)
前回、前々回とアフガニスタンの歴史を振り返ってみると、タリバンはあらゆる外国勢力と戦ってきたことがわかります。
アフガニスタン国民は、これまで世界中で植民地政策を行ってきたイギリスや、社会主義国家で無神論国家の旧ソ連、そしてグローバリズム推進のアメリカDSなど、イスラムの概念とは全く異なる西洋文明の原理による支配を経験してきました。
しかし、アフガニスタン国民は欧米諸国の拒否を、すでに100年以上も一貫して貫き通してきました。今回、はじめてタリバンは声明で、国際的な承認が得られる安定した国家建設を目標にしていると公表しています。
これが本音なのかどうかはわかりませんが、タリバン幹部と中国の王毅外相との会談では、タリバンは国内のテロ防止を約束に中国に全面的な経済支援を求めています。社会主義国である中国も旧ソ連と同様、無神論国家ですがタリバンは中国を利用して「国際協調の方針」を出しています。
1996年から2002年まで政権運営をしてきたタリバンは、20年前とは状況が違う結束力を維持し、アフガニスタンに点在する様々な民族と協力していく必要があります。また、インドやパキスタン、イランなどの近隣諸国と積極的な貿易に取り組むことも求められるようになると思います。
タリバン、アフガニスタン首都掌握から1週間 食品高騰で市民は困窮、銀行は閉鎖
(出典:2021年8月24日 Newsweek)
それには、外交を含めた新しい官僚制度を構築する必要があり、約半数の多数派パシュトゥン人だけではなくタジク人やハザラ人、そしてウズベク人も登用することが条件の一つとなりそうです。つまり、テロ防止には他民族との権力分与の取り決めが重要になるわけです。
タリバンが、「国際協調の方針」を主張しているということは、これまでにない政治的妥協を行うことを意味しています。実際に、タリバンは国内に点在する複数の政治勢力との協議を実施しています。
4つの民族が平等に参加する連立政権が誕生する可能性が高く、一時的な混乱が続くのは時間の問題であるかもしれません。タリバンは、1960年代までの立憲君主制時代のように、それぞれの民族に自治権を与えた「連邦国家」を建国するとも言われています。
今後、タリバン政権が安定に向かっていくと、女性や子どもへ抑圧や暴力行為も次第に減少していくことになります。そのためには、中国を中心とする資金提供が必要となり、日本も協力せざるを得なくなります。
中国、政府発足後にタリバン承認を検討
(出典:2021年8月18日 産経新聞)
問題は、アフガニスタン国内に隠れているアルカイダやETIMなどのテロ集団の武装解除をすることです。現在のアフガニスタンは1970年代のベトナム戦争後のように、米軍が撤退した後に社会主義化する可能性もあります。
結局、社会主義国となったベトナムは国際強調を行うことで経済が大きく発展しました。アフガニスタンもベトナムと同様、似たような外交政策を実施するしかないものと考えられます。ただし、西洋文明的な価値観を持つことはありません。
イスラム法を重視した国家を目指すため、他の中東諸国のように社会が安定していくのは間違いありません。国内にレアアースなどの豊富な鉱山資源を保有していることも、外国との関係が深まる重要な要素となります。
特に、中国は一帯一路政策のためにアフガニスタンを組み込み、経済的な発展をもたらすことになると思います。タリバンは、米軍撤退前から中国とは政治・経済的な話し合いを繰り返し、合意してきたわけです。
バイデン政権、アフガンで誤算の連鎖 支持率に陰り
(出典:2021年8月19日 日本経済新聞)
いずれにしても、アフガニスタン国内では短期的・局地的に戦闘や殺人が起きています。社会が安定していくのはまだ先のことですが、ツイッターなどの通信手段を利用しているタリバンは、明らかに以前とは違います。
今後、アフガニスタン政府内に情報機関が発足され、イラン防衛革命隊のような軍事組織も生まれることが予想されています。近隣のインドやパキスタン、イランなどと様々な情報戦が繰り広げられることになると思われます。
最後に、タリバンによるアフガニスタン制圧で、支持率を急激に落としているバイデン政権は、トランプの露出度が高まるにつれて外交政策の失敗が浮き彫りになってきました。2022年11月の中間選挙は、トランプ共和党の議席獲得数が増えることになりそうです。
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