なぜ国はお金を渋るのか?休業要請・補償を巡り政府VS自治体…東京都は独自の「協力金」も検討
(出典:2020年4月9日 FNN PRIME)
日本では、7都府県+愛知県に住む住民への自粛要請を中心に、罰則など強制力を伴わない緊急事態宣言に対する批判は国内外でされていますが、これと同時に「108兆円の緊急経済対策」に対する批判があります。
具体的な対策の内容としては、まずは世帯主の収入が減った「低所得世帯などに1世帯あたり30万円」を5月から給付するというものです。また、児童手当の受給世帯には「子ども1人あたり1万円」の臨時給付金を支給するとも述べています。
さらに、収入が半分以下に減った「中堅・中小企業に最大200万円」、「個人事業主に最大100万円」を支給し、税金や社会保険料の納付を「1年間猶予」するとも言っています。担保や延滞料、延滞税は免除する、という話も出ています。
<新型コロナ>30万円給付、どの世帯対象 年収ベース、住民税非課税
(出典:2020年4月8日 東京新聞)
特に、強く批判されているのは「1世帯あたり30万」です。実際に、30万円と言っても2つの厳しい支給条件があり、一つ目は2月から6月で収入が減り、年収に換算した場合に住民税非課税の水準となる低所得世帯であることが前提です。
独身の場合、住民税非課税の水準は年収100万円以下ですが、また4人世帯の場合は住民税非課税の水準は255万円と定められています。つまり、独身では新型コロナウイルスの感染拡大前の年収が125万円であったのが90万円になったようなケースです。
一方、4人世帯の場合は、新型コロナウイルスが蔓延し出した1月が300万円であったのが250万円なったケースであると考えられます。
二つ目の条件は、収入が半分以上減って、なおかつ年収換算で住民税非課税世帯の水準の2倍以下に落ち込む世帯であるという前提です。
独身の場合、1月は月収25万円、年収換算で300万円が2月以降は月収10万円、年収換算で120万円まで落ち込んだケースです。一方、4人世帯の場合、1月は月収50万円、年収換算で600万円が2月以降は月収25万円、年収換算で300万円に低下したケースなどが想定されています。
だから、例えば年収800万円の人が400万円に半減しても対象にならないことがわかります。また、共働き世帯で一方が解雇されても世帯主でなければ対象外となります。支給の対象になるのは、全国約6000万世帯のうち、約1000万世帯程度、つまり6世帯に1世帯ということです。
このように、「30万円の給付」という安倍政権の政策は、中身を見るとほとんどの国民は救済対象にはならないことになります。実は、この予算は5月の補正予算で支出されるため、実際に支給されるのは早くて5月です。
「一世帯に30万円給付」は高いか安いか――海外のコロナ補償との比較
(出典:2020年4月6日 Yahooニュース)
今回の新型コロナウイルスの感染爆発では、どの国の経済にとっても経済的負担を抱えており、どの先進国も手厚い給付を早急に支給する方針を出しています。例えば、アメリカは大人1人あたり約13万円、こども1人あたり約5万5000円を直接支給しています。
韓国は、全世帯の約7割にあたる1400万所帯に対して約9万円の緊急支援金を支給しています。また、ヨーロッパ諸国も既存の制度を拡大適用し、国民の大幅な収入減少に対応しています。
ドイツでは、政府が子育て世帯に直接支給し、自宅で自粛している親にも所得の67%が保障され、住居費や公共料金の支払いも猶予されています。フランスは、新型コロナウイルスで悪影響を受けた企業に対して、政府が給与の84%を支払うという条件で従業員の一時的解雇を認めました。
当然、収束後に一時的解雇は回復することになっているようです。イギリスやオランダ、デンマークなどでは、自宅待機している労働者に政府が報酬を支払うことが決まり、特にイギリスは給与の80%を政府が保証しています。
イタリアやスペインでは、こどもの学校が休校で自宅にいなければならない親に対して、育児休暇や病気休暇を拡大して適用しています。また、失業保険の対象にならない自営業者やフリーランスに対しても、特例として適用しています。
ドイツやフランス、イギリス、オランダ、デンマークなど、社会保障の制度が充実している欧州諸国は、一般の労働者が生活に困らないように政府が所得を保証する政策を行っています。
それに対して、厳しい条件をつけて6世帯のうち1世帯の所得の低い世帯だけに給付を限定する日本政府の政策を比較すると、その差はあまりにも大きいと言わざるを得ません。
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