軍事費も民の借金も倍増 数字で読み解く習政権9年
(出典:2021年11月9日 日本経済新聞)
コロナの影響で以前より消費がされなくなり、ますます貧富の差が拡大している以上、岸田政権の経済政策が無視できなくなっています。
一方、中国の習近平政権は新たな経済政策として「共同富裕」という概念を発表しました。今年8月、経済問題を協議する重要会議の「中央財経委員会」で、「共同富裕は社会主義の本質的な要求であり、中国の重要な特徴」と表明しています。
「共同富裕」とは、貧富の差を縮小して全ての国民が豊かになることです。ちょうど1年前に開催された「中国共産党中央委員会全体会議」では、2035年までに浙江省をモデルケースに計画を進めることが決まっています。
中国共産党創立100周年の祝賀式でも、共産党の目標である「小康社会(国民がある程度安心して生活を送れる社会)」が宣言されています。つまり、「共同富裕」はその次のターゲット目標となります。
胡潤百富榜 雙馬縮水鍾睒睒躍首富
(出典:2021年10月28日 旺得富 by China Times)
中国「月収1000元が6億人」の誤解釈──NHKも勘違いか
(出典:2021年11月9日 Newsweek)
ちなみに、中国の調査会社の世界長者番付の「胡潤百富」によると、2020年に10億ドル(約1100億円)以上の資産を持つ中国人は1000人を超え、ついにアメリカ人の700人を上回まって世界一となりました。
その反面、中国には月収1000元(約17000円)以下程度で暮らす人が6億人にも上り、貧富の差を示す数値に「ジニ係数」では社会が不安定になる0.4を超えています。日本のジニ係数が0.33であることを考えると、中国はいつ暴動が起きても不思議ではない状況にあります。
先進国の平均値が0.29であることから、日本国内の経済格差も相当広がっていることがわかります。それでも中国よりはまだマシですが、これまで放置されてきた中国国内の経済格差を固定させないために、中国共産党は手を打ち始めています。
中長期的に見ると、0.4は抗議デモや暴動などの社会不安がいつ引き起こされるかわかりません。中国共産党の一党独裁体制を崩壊させるには十分な格差ですが、それが深刻なのがアメリカです。
世界のジニ係数国別ランキング・推移
(出典:2021年7月29日 GLOBAL NOTE)
アメリカ国内では、経済格差によって国民を2つに分断し、民主党と共和党という政治的な対立を招いています。中国共産党は、アメリカを反面教師としながら、格差の放置と固定化がもたらす体制的な危険性を認識しているのは明らかです。
この危険を回避し、共産党の一党独裁体制を永続させるためには、まずは経済格差を解消しなければならないというのが習近平政権の認識です。「共同富裕」の宣言以前、すでに習近平政権による民間企業や個人への取り締まりは強化されていました。
例えば、IT大手のアリババ社が上海と香港の証券取引所に上場するのを禁止したり、学習塾や英会話スクールの新規参入規制と国外からの外国人講師規制。そして、芸能人のファンクラブやeスポーツなどまで取り締まりを開始しました。
当然、このような規制は共同富裕の基本であり、その目的は富裕層や企業に蓄えた富を社会へ還元させることです。習近平政権は、「富の再分配」を市場規制や税制、社会保障によって実施しています。
「共同富裕」って何なの?習近平政権のねらいは?
(出典:2021年11月29日 NHK NEWS WEB*)
社会主義国家である中国は、富裕層や大企業を中心に富を社会に還元するよう推奨しています。IT大手のテンセント社は約1兆円を共産党に寄付し、アリババは約2兆円の寄付を決めたばかりです。
習近平政権は、この共同富裕を分配によって、より公平な社会が構築しようとしています。つまり、より大きな中産階級を形成するために、強制的に富を取り上げるのではなく、社会に利益を還元する富裕な個人と企業を育成しているわけです。
要するに、中国政府によるトップダウン型の格差是正であり、富裕層や大企業を優遇している欧米諸国や日本とは全く異なっています。岸田政権は、中国との関係が深い茂木幹事長や林外務大臣を閣僚にしたことで、これから何らかの政策を積極的に行う可能性があります。
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