米朝会談決裂の下手人は「壊し屋」ボルトンか
先月開催されたベトナムでの米朝首脳会談が合意に至らなかったことについて、関係者は一様に驚いているようですが、過去に国際合意の破棄を推進してきたボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)の影響が大きいと複数の外交専門家が指摘しています。
それにしても、アメリカのペンス副大統領がかなり前から繰り返し軍事力についての発言をしているのが気になるところです。アメリカという国は、軍事力による世界制覇が国是ではありますが、トランプ大統領と比較してもあまりにも強調し過ぎているように思います。
「中国と貿易戦争し、ベネズエラも軍事占拠する…」といったように、ペンス副大統領は世界にとって極めて危険な感じがあります。これは、2000年代のブッシュ政権の実質的な戦争指導者であったチェイニー副大統領と全く同じ構造です。
その代弁者がボルトン国家安全保障担当であるわけで、彼の背後にいるのはおそらくペンス副大統領であると思われます。この報道はニューズ・ウイークというアメリカ民主党支持のメディアで、トランプ大統領とネオコンとも対立しているのは明らかです。その証拠に、ペンス副大統領が極右的な発言をしてもマスメディアからの批判は全くなく、逆にボルトン国家安全保障担当は何度も批判されています。
つまり、ペンス副大統領こそ軍産複合体の代表であって、ボルトン国家安全保障担当はその出先ということです。繰り返しますが、アメリカの国是というのはフロンティア精神であり、言葉を変えれば軍事征服という意味があります。
19世紀にアメリカ大陸を軍事征服した後、20世紀にはナチスドイツと戦ったふりをしてヨーロッパを軍事征服し、日本に原爆を落としたことでアジアを軍事征服し、フィリピンをスペインから奪い、ベトナム戦争で敗退したところで動きが一旦止まっています。
世界覇権国のアメリカが行っていることは、ローマ帝国やチンギスハン率いるモンゴル帝国が侵略してきたことと全く同じで、さらにペンス副大統領は、「台湾と中国は一戦を交えるべき」と語っており、「北朝鮮は殲滅すべき」と語っています。
要するに、ペンス大統領というのは軍産複合体、ディープステートそのものであるということです。
一方、トランプ大統領は国家財政赤字の問題について何とか解消しようという様々な努力が見えますが、ペンス副大統領はロシアや中国、北朝鮮など軍事力で圧倒することで財政赤字を解消できるという考えであるように思います。
このことは、共有・共生を旨とする日本人の政治思想では気が狂っているようにしか思えず、トランプ大統領がダウ平均株価の価格維持を行っている理由として、軍産複合体を暴走させないことが挙げられます。
私は、北朝鮮の金正恩との合意についてもトランプ大統領が意図的に会談を破談させたと考えています。そう考える最大の理由は、決裂した2日目の閣僚をまじえた交渉で、米朝関係の好転に尽力してきたビーガン北朝鮮担当特別代表でなく、トランプ側近群の中で北を敵視する代表格であるボルトン安全保障担当補佐官を、交渉のテーブルに座る面々の一人に選んだからです。
ビーガン代表はテーブルでなく、後ろの列に座らされ、韓国の丁世鉉・元統一相は、米朝首脳会談が破談した理由について、首脳閣僚会議のテーブルについたボルトンが北朝鮮が拒否せざるを得ない新たな条件を突然出してきたからだと語っています。
The Real North Korea Summit Is Inside the Trump Administration
こうなると、最終的には国家債務不履行というデフォルト・ドミノになった時に、戦争を起こすかもしれません。そして、最も危険な場所は台湾ということになり、中国を空爆するだけでも効果が高いということです。
これに対して、北朝鮮を空爆することになれば中国とロシアを相手に戦争をする必要があります。人間というのは、金も権力もない無力なうちは正しいことを語り、正しいことを行いますが、権力が大きくなればなるほどやる事なす事、考えることが無茶苦茶になりがちです。
お釈迦様は、それがわかっていたから全てを捨て、托鉢する生き方に決めたということかもしれません。それでも仏教が急速に広がり始めたため、利権を失いつつあったバラモン教の僧侶に毒キノコを入れられたというわけです。
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