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ミャンマー弾圧死者500人超に、米や国連が改めて非難
 (出典:2021年3月30日 Reuters)
激しい内戦が起きているミャンマーですが、昨年11月の総選挙で、民主派の指導者アウンサン・スー・チーが率いる政党NLDが圧勝し、今年2月に国軍がクーデターを起こし、ウィンミン大統領とスー・チー国家顧問を拘束して事態となりました。
その後、2ヵ月以上もミャンマー国内では激しい抗議運動が続いています。クーデターが始まってから、治安部隊の武力行使による犠牲者が増えており、4月6日現在、犠牲者の数はおそらく1000人以上となっています。
また、治安部隊の暴行や略奪も続いており、最大都市ヤンゴンで撮影された動画では、治安部隊が配備したブルドーザーが市民の車を次々と押し出しています。また、治安部隊が店舗を略奪しているとの報告も出てきています。
地元の人権団体によると、クーデターが始まってからミャンマー社会は急激に不安定になり、日本では具体的に報道されていませんが、法の秩序は完全に破壊されています。
そのような状況の中、国内にいる少数民族の抗議運動が激しくなっています。首都ネピドーや大都市マンダレーで、「カレン族」など多数派のビルマ族を含む16部族が国軍の独裁体制打倒を目的とする「スト委員会」を設置したと宣言し、スー・チー側についています。
【解説】ミャンマーの少数民族武装勢力
 (出典:2021年4月1日 Yahooニュース)
実は、ミャンマーは多数の少数民族で構成されている多民族国家です。戦後、イギリスから独立した1947年以来、ミャンマーからの分離独立を主張する少数民族は、武装組織を設立して内戦状態が続いていました。
ミャンマー北部カチン州で活動する武装組織が最も有名ですが、「カチン族」による独立を目指し、これまでゲリラ戦を展開してきました。山間地域に暮らす「カチン独立軍(KIA)」は、ジャングルに隠れながらの陽動作戦を得意としています。
さらに、ミャンマー南東部に住み、カレン語を話す「カレン族」も独立を目指して結成した武装組織を設立し、「カレン民族同盟(KNU)」の正規軍が集まっています。兵器のほとんどをアメリカが支援していましたが、2013年に政府と合意し、停戦協定を調印しています。
そして、ミャンマー南東部やベトナム、タイに住むモン語を話す「モン族」も新モン州党を設立し、ミャンマーからの独立を要求してゲリラ戦を戦っています。こちらも、2018年にミャンマー政府との間で停戦協定を調印しています。
主な武装勢力には、ワ州連合軍(UWSA)やアラカン軍(AA)、タアン民族解放軍(TNLA)、ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)などが含まれています。この他、ミャンマー国内に存在する少数民族は次々と武装組織を結成し、2013年からミャンマー政府との間で停戦協定に調印しています。
その結果、バングラデシュとの国境に住む「ロヒンギャ」との争いを除き、ミャンマーの内戦は沈静化し、昨年までは比較的に平穏な状態が続いていました。しかし、2月からミャンマー国軍のクーデターに抗議した少数民族の武装組織は、停戦協定の破棄を決定し、国軍との敵対関係を明らかにしました。
ロヒンギャ問題:「スーチー責任論」より大事なこと ミャンマーが抱える少数民族問題と「一帯一路」の対中外交
 (出典:2017年9月28日 JB press)
ミャンマーで、少数民族との内戦状態が長年続いている理由は、またしてもイギリスの植民地時代が原因となっています。1886年当時のビルマの宗主国は清(現在の中国)でしたが、イギリスは清にビルマの宗主権を認めさせ、ビルマをイギリス領インドに併合して植民地化しました。
当時、ミャンマーは北部に住むビルマ族の勢力下にあったことで、イギリスはビルマ国民が団結してイギリスに抵抗することを恐れ、「分割統治」を始めました。その結果、新たにイスラム教徒のインド人と華僑を入れたわけです。
つまり、多民族宗教国家に変えると同時に、カレン族などをキリスト教徒に改宗させて統治に利用し、民族別に権利を分割させた政策を実施したということです。たとえば、インド人が金融、華僑が商業、その他の少数民族が国軍と警察を掌握し、多数派のビルマ人は最下層の農民にしました。
このイギリス統治時代の身分の上下関係によって、ビルマ人から少数民族への憎悪が残り、74年以上も民族対立が起きています。少数民族は、ビルマ人(国軍)の支配に強く抵抗し、分離独立を求めて現在に至っています。
ミャンマー、国外逃亡した警官の送還をインドに要請 「友好関係維持のため」と
 (出典:2021年3月7日 BBC)
そのような状況の中、スー・チー側の民主派活動家や国軍の弾圧に抗議していた元軍人や元警察官の亡命が始まっています。彼らの一部は、すでにインドやタイ、ベトナムなど外国に亡命しています。
彼らの亡命先として選ばれているのが、民族独立を主張する少北部のカチン独立軍や東部のカレン民族解放軍などが支配している居住区です。少数民族は、元軍人や元警察官、そして民主派の活動家をかくまっています。
そして、ミャンマーの大都市で抗議運動を展開し、治安部隊の弾圧の対象になっているのが武装組織のメンバーではない一般市民です。長年、内戦を戦ってきた各部族の武装組織は強力な兵器を保有しており、国軍でさえ恐れています。
今後、国軍の弾圧がさらに大規模になると、少数民族の武装組織が国軍と激しい銃撃戦に発展する可能性があります。実際に、ミャンマー政府と結ばれた停戦協定は破棄され、再度内戦が起きる寸前にあります。
無関係ではいられない?軍系企業リスク
 (出典:2021年3月15日 NHK NEWS WEB)
ミャンマーには、多くの日本企業が進出していますが、国軍との契約によって運営されていた「キリンビール」のように不買運動を恐れ、撤退しようとした企業もあります。ちなみに、ミャンマーの場合はスー・チー側がディープステート陣営で、国軍がトランプ陣営のような雰囲気があります。
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