サウジ石油攻撃の“黒幕”は誰か?イラン懲罰に苦慮するトランプ氏
サウジアラビアの石油施設への攻撃から一週間が過ぎた今、アメリカのシンクタンクやイスラエルのメディア、そして中東のメディアからは、攻撃の実態について報道が出始めています。
まず、明らかになったことは、「攻撃はドローンと巡航ミサイルが使われた」ことです。ドローンや巡行ミサイルはいずれもイラン製で、ドローンからは17発と巡航ミサイルからは2発が打ち込まれ、12機が石油施設に命中させ、5機が目標を外したことが分かっています。
また、2機の巡航ミサイルはイラン南部でイラク国境に近い場所から発射され、ドローンはイラク西部の軍事基地から発射されたとされています。そして、この攻撃を実質的に指揮したのは、「イラン革命防衛隊」の司令官であるということです。
イランの支援を受けているのは犯行声明を出したフーシ派だけではなく、シーア派やスンニ派など比較的に幅広い宗派や宗教の民兵が参加しているようです。さらに、IS退治の時にイランがイラクの民兵組織を支援しているということもわかってきました。
いずれにしても、サウジアラビアと戦争中であるイエメンの反政府勢力でイランが支援する「フーシ派」が今回の攻撃の犯行声明を出したわけですが、フーシ派はイラクの「人民動員軍」とは全面的な協力関係を築いています。
つまり、イラクの「人民動員軍」は、イラク西部の軍事基地から発射されたドローン攻撃に協力していたものと思われ、これがフーシ派の犯行声明の根拠になっているということです。以下の報道記事はブルームバーグですが、
イエメンのフーシ派、サウジ石油施設を引き続き標的に-声明
イランから支援を受けているイエメンのイスラム教シーア派系武装組織フーシ派は、今後もサウジアラビアの石油施設を標的にすると表明した」と報道していますが、フーシ派が出したという犯行声明は、実はどのメディアも公表しておらず、それが存在しているのかさえわかりません。
情報分析の結果として、今回のサウジアラビアの石油施設への攻撃は、イランの一部勢力が行った可能性が最も高く、今後、アメリカとイスラエルがイランへの攻撃に踏み切る十分な口実となり、全面戦争にもなりかねない状況に突入していくと考えられます。
一方、イランのロウハニ大統領とザリーフ外相は、トランプ政権との交渉に前向きな姿勢も示しており、今月行われる国連総会でイランの最高指導者ハネメイ師がトランプ大統領と会談を行う可能性もあります。果たして、そのような状況で戦争へと緊張を一気に高めるサウジアラビア攻撃をイランが行うでしょうか?
このように見ると、今回の攻撃にイラン政府は関与していないと見るべきで、攻撃した勢力は最高指導者のハメネイ師に忠実な「イラン革命防衛隊」を中心とする強硬派のグループの可能性が高いと言えます。
2015年、イランは核兵器の開発断念と引き換えに国際社会への復帰を許された核合意をアメリカやEU諸国と締結しました。しかし、イラン国内では強硬派が強く反対していたとされています。
実際に、イランの影響下にあるシリアやイラクのシーア派系武装民兵組織は、「イラン革命防衛隊」を中心としたイラン強硬派の強い影響下にあります。これらの組織を実質的に支援しているのがイラン強硬派ということです。
こうした強硬派からすると、新しいイラン合意で自らが支援する武装民兵組織のイラクとシリアからの撤退は、トランプ大統領と会談を行ったところで到底容認することはできません。だからこそ、何としてでも国連総会での会談が行われる前にこの話を潰さなければならなかったわけです。
これが、イランの強硬派がサウジアラビアの石油施設への攻撃に踏み切った理由だと見られています。この結果、一時は可能性が高いと見られていたトランプ大統領とハメネイ師との会談の可能性はほとんどゼロになっています。
それにしても、なぜサウジアラビアは自国経済の中心産業である石油施設と油田の攻撃を許してしまっているのでしょうか?
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