危機説VS楽観論、「国の借金」1200兆円でバトル【けいざい百景】
(出典:2021年5月19日 時事通信)
2013年に安倍政権が経済政策「アベノミクス」を開始して以降、政府・日銀は日本国債(紙幣)を大量発行(印刷)する「量的金融緩和」でGDPの260%(約1200兆円)もの債務を抱えています。
そのことについて日本の主要メディアは問題視しておらず、むしろ海外のエコノミストやジャーナリストが問題を指摘するようになりました。内容としては、債務拡大政策を10年以上続けていても、未だに日本経済は停滞しているという主張です。
つまり、1ドル=160円台まで円安が進んでいる一つの要因として、日本円そのものの信用が落ちているということです。具体的には、日本で利用されている「クラウドサービス」、要するにインターネット経由で様々なITリソースがアメリカのGAFAに支配されていることが問題です。
クラウドサービスとは、サーバーやデータベース、ストレージ、アプリケーションをオンデマンドで利用することができるサービスの総称ですが、必要な時に必要な量のリソースへ簡単にアクセスすることができるのは日本企業のサービスではなく、アメリカの巨大IT企業のサービスなのが現状です。
例えば、アマゾンのAWSサーバーは日本政府も利用しており、その他アップルやグーグル、マイクロソフトなどがインターネット上のビジネスを支配し、時価総額ランキングで世界1位となったエヌビディアはAIなど高度なコンピューティング関連のICチップを日本に提供しています。
貿易赤字3年連続、23年度5.8兆円 資源高一服で縮小
(出典:2024年4月17日 日本経済新聞)
財務省が4月に発表した2023年度の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5兆8918億円で3年連続「赤字」となっています。ところが、デジタルサービスの年間収支の赤字はこの5年間で2倍以上の約5兆5000億円までに膨れ上がっています。
ちなみに、観光産業を中心としたインバウンド需要の約3兆6000億円よりも深刻な状態であり、通販やインターネット広告、SNS、AI、電子メール、検索エンジン、そしてコンサルティング業務なども項目として含まれています。
デジタル赤字5・5兆円、14年比で2・6倍…米巨大ITへの依存増
(出典:2024年2月19日 読売新聞)
現在、日本国内での通販シェア第1位はアマゾン(49%)であり、第2位が日本の楽天です。また、携帯電話のシェア第1位はアップル(iPhone)であり、その後を韓国のサムスン(Galaxy)、そして日本のソニー(Xperia)などが追いかけている状態です。
また、コンピューターやスマートフォンに搭載されているOSのシェア第1位はマイクロソフト(Windows)で第2位がアップル(iOS)です。3位はグーグル(Android)ですが、検索エンジンのシェア率は断トツで1位です。
結局、日本企業のデジタルサービスで利用されているのは楽天だけであり、アメリカに大きく水をあけられているわけです。
23年度の経常黒字、最高の25.3兆円 資源高一服で
(出典:2024年5月10日 日本経済新聞)
不思議なのは、ここまで外国企業が提供する商品やサービスに日本が依存する中、「経常黒字」を続けていることです。財務省が5月発表した2023年度の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引状況を表す経常収支の黒字は25兆3390億円でした。
2022年度から約2.8倍に増加し過去最高を更新した理由として、「資源価格の高騰が一服して貿易収支の赤字が改善したことが影響した…」と報道されていますが、本当の理由は日本特有の経済感覚がかなり優れていることにあると思います。
そもそも、経常収支は輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支や、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支、旅行収支を含むサービス収支などで構成された経済指標ですが、日本経済は全体的に安定していることがわかります。
ただし、日本政府や経団連加盟の一部大企業、自治体などが関わっているプロジェクトやイベントは全て失敗する可能性が高く、日本経済の将来性については情報リテラシー力次第で、楽観的にも悲観的にもなれます。
少なくとも、日本を客観的に分析している私たちAtlasや海外のジャーナリスト、エコノミストは日本が危機的な状態にあると認識しています。そして、危機的な状態に陥るのは政府・大企業・自治体と関係各社、そして見て見ぬふりをしてきた多数のサラリーマンたちです。
今さら、日本のIT企業がGAFAに対抗できるOSや半導体を開発できるわけがなく、日本は経常収支を黒字にした総合力で乗り切るしかないのかもしれません。
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