トルコ国内に配備されている米国製核ミサイルを人質にしているトルコは、シリア北東部からトルコ軍を撤退させることはないと思われます。
トランプ政権が、どれほど経済制裁しようとも、トルコ軍が撤退しないことはもはや明らかになっています。
そして、すでにトルコ軍がシリアに侵攻してしまった状況では、トランプ大統領が過去の決定を撤回し、米軍をシリアに再駐留させようとしても、すでにトルコ軍が駐屯している現在の状況では、手出しが不可能となりました。
早速、トランプ大統領はペンス副大統領をトルコに派遣し、エルドアン大統領との会談を申し出ていますが、トルコのエルドアン大統領は「私が会談するのはトランプだけ」と語り、ペンス副大統領との会談を拒否した場面がありました。もはやアメリカの仲介による緊張緩和の動きは不可能であるということです。
そのような状況の中、トルコ軍撤退と緊張緩和に向けた唯一の選択肢は「ロシアによる仲介」しかないように思います。ロシアのプーチン大統領は、シリアのアサド政権を支援していると同時に、トルコのエルドアン大統領とも良好な関係を維持しています。
ロシアがシリアで影響力拡大、米軍撤退の空白埋める-国境付近で監視
現在のところ、ロシア軍はトルコ軍が侵攻する危険性のある地域を24時間体制でパトロールし、クルド人部隊と交戦状態にならないように防止しています。また、撤退した米軍の拠点がロシア軍の管理下に入ったため、クルド人部隊と協力していた米軍の極秘情報がロシア軍の手に渡ってしまうことになりつつあるようです。
いずれにしても、トルコ軍がシリア北東部のクルド人地域から撤退するようなことになれば、ロシアによる仲介が成功し、ロシアの監視の元でエルドアン政権が要求する安全地帯ができるということです。
そして、それはクルド人側も受け入れ可能なものでなくてはならないということです。今、この方向に動くのかどうかが世界中で注目されており、これしか問題解決の方法がないのであれば、この方向に動くと考えられます。
しかし、もしロシアによる仲介によって緊張が緩和するのであれば、シリアはほぼロシアの勢力下に入ることになり、シリアやトルコで影響力を完全に喪失したアメリカは、中東全域で覇権を失うことになります。
これからは、アメリカの代わりにロシアが中東の秩序を安定させる役目を担うようになり、さらに中国と共に台頭していくことになるのは間違いありません。
そんな中、早速プーチン大統領は、中東ではサウジアラビアに次ぐアメリカの同盟国であるアラブ首長国連邦(UAE)を訪問し、関係強化で合意しています。
ついに、トランプ大統領によってシリアから撤退命令が出た中東方面の米軍の動きを見ていくと、中東でのアメリカ覇権をわざと弱くしている戦略が上手くいっていることがわかります。
ロシア大統領、12年ぶりにサウジ訪問 中東での影響力拡大誇示
今後、これはイスラエルやイラン、サウジアラビア、カタールなど中東の主要国の関係に歴史的な変化を迫ることになるものと思われます。そして、それは韓国にある米軍基地が撤退することで、大きな変化が東アジアにも押し寄せてくるということです。
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