EU、英国が動かない限り離脱合意は不可能との認識-関係者
イギリスがEUからの離脱するいわゆるブレグジット問題で、結局、EU(欧州連合)首脳と合意ができなかったと報道されています。
欧州委員会が形だけの合意をイギリス政府に提案したことで、イギリス議会で与党と野党がお互いに揉めるだけに終わるわけです。
そのような状況の中、イギリスのジョンソン首相はEUと合意できない場合であっても、10月末に離脱を強行する可能性が高くなっています。なぜかと言えば、これ以上の延期を総選挙や国民投票などという方法で時間をかけられないからです。
そもそも、なぜ、イギリス人たちはEUからの離脱を焦って行おうとしているのでしょうか?しかも、10月末と期限を決めているわけです。その主な理由は、ドイツ銀行が破綻する際、救済処理で2000億ユーロ(約24兆円)分の分担金を払いたくないからです。
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特に、イギリス中央銀行のイングランド銀行と財務省がそれを拒否できるためにも、10月末までにEUから離脱しなければならないと考えているのは明らかです。
だからこそ、イギリスに来る移民の流入を阻止する必要があり、このようなイギリス国民の切実な願いの他、イギリスの支配階級は、ヨーロッパ発の金融危機に直面した際、イギリスは負担をさせられたくないから、EUから完全に脱出したいというわけです。
イギリスの本音としては、EU内にいれば関税が一切かからないため、EUのルールには入っていたいですが、そのようなわがままをEU各国の首脳たちが許すはずがありません。
一方、ドイツのメルケル首相は「ドイツ銀行の破綻を処理して片付ける」と公表しましたが、処理することになる負債総額は3兆ユーロ(約360兆円)にもなります。そして、その15倍に当たる45兆ユーロ(約5300兆円)のデリバティブ取引の残高も残されているのが現状です。
メルケル首相は、これを強制的に契約解約させ、90%異常の取引を無効にしようと企んでいます。つまり、無かったことにするというわけです。この方法は、2008年に起きたリーマンショック(世界金融危機)の時にアメリカ政府が実行しました。
アメリカ政府(オバマ政権)は、「政府の救済で処理した負債総額は4兆ドル(約390兆円)であった」と時間が経ってから発表しましたが、本当の金額はその5倍に当たる20兆ドル(約1900兆円)であったことが分かりました。
一方、日本でも1998年に山一証券の破綻から始まった金融危機が起きました。長銀が経営破綻した後、北海道拓殖銀行など地方銀行も次々と破綻していったわけでです。当時、日本政府(小渕政権)は救済資金として約140兆円を処理しました。これによって、メガバンクから日本各地の地方銀行、さらに信用金庫まで助けたことになりました。
今回、ドイツ政府は破綻が確実視されているドイツ銀行の負債処理のために、3兆ユーロ(約300兆円)は負担するものと思われます。そして、世界第2位の経済大国で、ドイツ銀行の実質的なオーナーである中国は、50兆円程度の支援をするものと考えられます。
日本もある程度の拠出を求められることになりますが、5兆円ほどの負担は最低でも強いられると思います。ところが、アメリカのトランプ大統領は、「アメリカ・ファースト」を理由に1ドルの救援資金も出さないことになりそうです。
他方、IMF(国際通貨基金)と世界銀行がそれぞれ50兆円程度を拠出すると見られています。結局、中国がドイツを救済するということは、ヨーロッパ全体を助けることになり、このタイミングでいよいよアメリカとイギリスは欧州覇権をやめることになるということです。
その後、アメリカ・イギリスとEU(欧州連合)の間で完全に亀裂が生じることになり、中国とロシアという新しい覇権国がヨーロッパ全体の面倒を見る、という時代が来るのかもしれません。
イギリスのジョンソン首相は、EU(欧州連合)大統領と評議会メンバーに本人の署名のない離脱延期を求める手紙を送付しましたが、同時にイギリスのEU離脱延期はEUの利益を損なうという手紙も本人の署名入れで送っていることがわかりました。
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