米中「第1段階合意」に署名 中国は輸入拡大や知財保護
(出典:2020年1月16日 日本経済新聞)
本日16日に第1弾の米中合意が発表されましたが、2019年を振り返ってみると、1月から米中貿易戦争で始まって年末まで米中貿易戦争に明け暮れた年になったわけです。
アメリカと中国がお互いに関税を上げた政策は、中国経済を直撃し、過去25年間でもっとも低い6%の成長率に留まっています。まだこの影響は本格的に中国社会に及んでいませんが、2020年秋頃にはその影響が大きくなることが懸念されています。
そのような状況の中、アメリカと中国が今からちょうど1ヵ月前の12月13日にお互いに妥協が成立する可能性を示唆したのを覚えているでしょうか?
中国政府は、記者会見で米中貿易協議の「第1段階合意」に関して発表し、トランプ大統領も「非常に大きな合意に達した」と述べ、中国政府の発表を裏付けた形で無事に新年を迎えたわけです。
ただし、この「第1段階合意内容」に関して、重要な両国間の解釈の食い違いが浮上しつつあります。つまり、合意が本当に成立するのかどうかがはっきりしない状況が続いているということです。
1月に入り、イランとの軍事衝突を挟んで、米中の妥協による関税戦争の終結を期待して、ニューヨーク・ダウ平均株価や日経平均株価は連日の高値を更新しています。今年は、アメリカ大統領選挙の年ということで、米中貿易戦争の余波でアメリカ経済が減速することを恐れていることから、両国は何らかの妥協をする見方がほとんどです。
少なくとも米中貿易戦争に関する限り、欧米のシンクタンクのレポートにも、「2020年は比較的平穏な年になる」のというレポートが出回っており、イランや北朝鮮情勢以外では好景気の見通しとなっています。
確かに、今年に関して言えばそうかもしれませんが、アメリカ大統領選挙でトランプ大統領が再選した場合、もはや次の大統領選挙を考慮する必要のないトランプ政権は、米中対立をさらに厳しくしていく可能性が高くなっています。
2021年以降、その影響によって世界貿易が全面的に縮小してしまうという事態にもなりかねません。要するに、アメリカと中国による世界覇権の二極化が始まるということです。
なぜかと言えば、トランプ政権が、経済減速のリスクをわざと負ってでも中国と徹底して対立する理由は、中国の安全保障上の脅威が存在しているからです。実際に、国防、つまり安全保障上ではアメリカは中国に脅かされています。
第4次産業革命(AIや5G、ブロックチェーンなど)のハイテク覇権を巡る争いという側面もありますが、それだけでは米中対立の本当のことを理解することはできないと思います。
アメリカの国防産業というのは、これまでのグローバル化による製造業空洞化の影響を受け、軍事兵器の生産能力が衰退していることが、イランとの軍事衝突でも明らかになっています。
ロシアや中国と比較すると、300以上の分野でアメリカの国防産業の劣化が進んでおり、アメリカの国防産業は中国のサプライチェーンに依存しなければ、すでに成り立たなくなっている状況になっています。
アメリカは、注目されている新しい通信規格の「5G」でも中国に勝てなくなっています。2020年からは、中国がリードしている「Sub-6」という規格が世界を主導するものと考えられます。そして、5年後の2025年はついにアメリカは中国に白旗を上げるかもしれません。
米5G戦略 中国との覇権争いにソフト開発で巻き返し図るも、実効性に懸念の声
(出典:2020年1月5日 産経ビズ)
いずれにしても、このままでは最新のIT技術をはじめ、あらゆる分野で中国に差をつけられ、安全保障を脅かされる状況になっていくということです。この状況を逆転し、中国の安全保障上の脅威に対処するためには、経済の減速を懸念して手加減などする余裕などないわけです。
アメリカが中国の発展を抑え込むためには、中国との経済関係を極限まで縮小する可能性があり、米中関係は11月の大統領選挙を過ぎると再び激しい競争になっていくはずです。
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