アメリカとイランの緊張状態が続く中、この状況が戦争に発展する可能性を示唆する報道がされています。
イランの隣国であるイラクで駐留している米軍関連の請負業者の撤収が相次いでいるようです。イラク空軍にはF16戦闘機が配備されており、メンテナンスのために軍用機メーカーのアメリカ人従業員が数百人単位でイラクに駐在しています。
ところが、派遣している従業員の安全確保ができないとして、従業員全員の即時撤収を決定し、首都バグダットの北にあるバラッド空軍基地に派遣されることになりました。この撤収はイランとの戦争が始まり、イラクに駐留している米軍が攻撃されることを恐れた処置だと見られています。
また、フランスやドイツなど同盟国の反発が強く、トランプ政権は大規模なイラン攻撃は実施できないのではないかとする見方が強くなりつつあります。しかし、同じ同盟国でもイギリスだけは異なるようです。
イギリスの保守党党首候補のジェレミー・ハント外相は、アメリカはイギリスの最も重要な同盟国であり、アメリカからイラン攻撃で協力の要請があれば真剣に対応するとし、アメリカの対イラン軍事行動に積極的に参加する可能性を示唆しています。
タンカー攻撃、イランの責任は「ほぼ確実」 英外相
すでにトランプ政権とは密接に協議しているようですが、トランプ政権は同盟国の強い反発があることで、イラン攻撃はできない見方が強いですが、ハント外相の今回の発言によって、イラン攻撃となれば多国籍軍の編成が可能になってきました。
そのような状況の中、アメリカとイランとの関係は緊張がさらに強まる方向に動いており、トランプ政権がイランを交渉の場に引きずり出せない場合、イランを軍事的に攻撃する可能性も否定できなくなりつつあります。
一方、こうした状況でイランの情報はほとんど報道されることがなく、イランの情報を知るためには、ロシアや中東、さらにイラン(ペルシャ語・英語など)のメディアから得る必要があります。
しかし、そうした報道を読んでいくと、トランプ政権によるイラン軍に対するサイバー攻撃は、実は失敗であった可能性が高いことがわかります。例えば、イランのファルス通信は今回のイラン軍ミサイルコンピューター・システムのサイバー攻撃は失敗したと報道しています。
イラン当局によると、ミサイルコンピューター・システムへの攻撃は昨年だけでも3000万回以上もあり、イランはこれに対応できていると言います。今回、もアメリカはサイバー攻撃を仕掛けましたが、イランの強力なファイアーウォールを突破することはできなかったようです。
さらに、イランのファルス通信を読み込んでいくと、確かにイランによるアメリカの無人機への攻撃が戦争の引き金になり得た可能性があったことが判明しています。
「イラン革命防衛隊空軍」の幹部の話として、イランの領空を侵犯したのは米無人機だけではなく、搭乗員が30人超の「P8哨戒機」がイランの空域を侵犯したと報道しています。
P8哨戒機も十分に撃墜可能であったものの、人的被害が引き起こす問題の拡大を懸念し、撃墜は無人機に限定したということです。もしこの証言が事実で、本当にP8哨戒機が撃墜されていれば、アメリカの全面的な報復を招き、大きな戦争の引き金になっていた可能性があります。
今回の無人機撃墜でアメリカを驚かせたのは、イランが使用した迎撃ミサイルの性能です。イランはロシアの技術を改良した国産の中距離・短距離のミサイルを保有しており、今回の攻撃に使われたミサイルは、「コーダッド3」と呼ばれているものです。
今や、世界一の高性能迎撃ミサイルであるロシア製の一つ前のモデルである「S300」を元に、イランが改良したミサイルは、サウジアラビアやトルコ、インドなどアメリカの同盟国からも購入希望が殺到しています。
結果的に、トランプ大統領が10分前に攻撃を中止しましたが、イランに対する攻撃が本当に行われた場合、米軍側にも大きな損害が出ていた可能性があります。そして、それは大規模戦争の引き金になっていたかもしれません。
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