2011年3月11日に東日本大震災が発生しましたが、ほぼ同じ時期に日本はGDP(国内総生産)で中国に抜かれ、3位に転落したと報じられました。
以前から予想されていたことではありますが、この衝撃は大震災の爪痕がまだ癒えない日本人の誇りを打ち砕いたわけです。1968年に西ドイツを抜いて世界2位の経済大国に躍り出てから、日本にとって経済力こそが自信の源泉であったように思います。
政治は三流でも経済は一流と言われ、一時的には第1位のアメリカを抜いたこともありました。その日本が43年ぶりに中国に抜かれてしまい、次の覇権国家は中国という主張も声高に叫ばれるようになり、現在に至ります。
実際に、日本は1997年に消費税の増税をしてからというもの、経済成長は20年以上も伸び悩み、デフレのまま自殺者は毎年3万人を超えるようになりました。10数年にわたる不況の中で、こんな悲観論に陥るのも無理のないことかもしれません。
しかし、GDP(国内総生産)が世界3位に転落したことは、歴史を正しく振り返ってみると1番手や2番手ではなく3番手に控えていることで、むしろ次の覇権国家に近づくという考え方があります。
15世紀~現在までの世界の覇権交代を見ていくと、No.2の国がNo.1の国に挑戦した場合、No.1、つまり覇権国家になったことがないわけです。500年以上にわたり、No.1に挑んだ国は、事実上敗北しており、意外なことに次の3番手、No.3の国が次の覇権国に上がっています。
つまり、1位と2位が覇権を巡って潰し合うことで無傷の3番手が漁夫の利を得る形で、次の覇権を握るということです。この歴史の法則からすれば、世界2位というポジションが危険なことが分かってきます。
日本はGDP(国内総生産)で3位にいることで、現在の覇権国家であるアメリカに潰されるリスクが減っています。世界の覇権争いは、日米で行われる可能性はなく、米中で行われる可能性が高まっています。
実際に、中国は分かりやすい形でアメリカに挑戦しつつあり、アメリカもこれに応戦しています。いずれにしても、今後、米中は軍事や経済などで覇権争いを激化させていくことになるのは誰の目にも明らかです。
世界の覇権国交代の歴史を振り返ってみると、16世紀の大航海時代での覇権国家はポルトガルであったわけですが、それに挑戦したのがNO.2のスペインでした。そして、その3番手がオランダであったということです。
17世紀の覇権はそのオランダが握ることとなり、挑戦した国はNo.2はフランスでした。3番手にはイギリスが追随していました。
18世紀は産業革命時代に入り、そのイギリスが覇権国家になりました。それをNo.2のフランスが追いかけていました。当時、3番手の国はなく、19世紀に入り、イギリスの覇権が続くと、No.2のドイツが覇権に挑戦し、見事に戦争負けて失敗しました。3番手にはアメリカがいました。20世紀に入り、そのアメリカが覇権国になりました。それにNo.2の旧ソ連が挑戦し、日本は3番手にいました。
そして、21世紀に入り、アメリカの覇権はあと数年で終焉を迎えようとしています。2番手は中国、そして日本は依然として3番手のままです。現在のアメリカと中国は、貿易やIT情報戦争などでぶつかり合ってます。
その間、日本はじっくりと力をためておくことで、21世紀の覇権国家の条件を満たせることになるというわけです。外交戦略としては、No.1とNo.2を競わせる「二虎競食の計」を採るということです。大切なのは、アメリカと中国に対して覇権争いを挑まないことです。
これまでのように日米同盟を堅守しつつ、日本の独立性を徐々に高め、経済力の回復に努めれば日本の未来は決して暗くはないということです。
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