コラム:米経済独り勝ちと円安、日経平均最高値更新を演出する構図=佐々木融氏
(出典:2024年2月20日 Reuters)
日米のメディアは、アメリカ経済の好調さばかりを報道していますが、その根拠が経済成長率です。2023年10~12月の成長率は前期比3.3%(年率換算)と発表され、景気後退入りするとの見方が多かったですが、全く逆方向の結果となりました。
結局、FOMCが想定する経済成長率1.8%を上回る成長が1年半も続いています。景気の良さは個人消費が原動力となっており、それが雇用を増やして賃金の上昇を抑えているからです。
懸念されていた貯蓄額の減少や教育ローンの返済延滞もほとんど起きず、アメリカ国内では十分にカネが回っています。また、1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で3.1%上昇と、インフレ率も低下傾向が見られます。
ところが、アメリカ全土に住んでいる私の友人たちは、「発表されている経済指標がデータを改ざんしており、報道されているような景気の良さは感じない…」と口々に語っています。彼らは大学講師であったり、企業経営者ですが、「景気は悪い」と言っています。
例えば、大都市のサンフランシスコやニューヨークの飲食店でもほとんど客が入っておらず、仕事の受注も明らかに増えてないことを訴えています。景気の良さ・悪さの感じ方には個人差がありますが、おそらく日本と同様にアメリカでも情報統制が敷かれている可能性が高いです。
米経済の好調示す統計、アナリストはうのみにせず 「過熱」側に傾く経済成長・労働市場・インフレ統計
(出典:2024年2月22日 DIAMOND online)
実際に、SNS上では実体経済と金融経済のギャップが激しく、株価暴騰の恩恵が生活に直結していないとの意見が増えています。本日、日本でも日経平均株価が史上最高値を更新しましたが、景気の良さは全く感じません。
つまり、利益を上げているのは大企業経営者と幹部、そして株主だけであり、従業員は大量にレイオフ・リストラされているのが現状です。しかし、経済指標上の失業率は3.7%と低いままで、数字だけ見れば景気が良いと思ってしまいます。
だから、政府機関ではなく、民間の調査会社が発表している指標も確認する必要があります。実は、アメリカ国内ではインフレ率と金利上昇が原因で失業者数が急激に増え始めているようです。
Despite Ongoing Mass Corporate Layoffs, Govt-Supplied Jobless Claims Data Continues To Decline
(出典:2024年2月15日 Zero Hedge)
アメリカでは、今年1月だけでも人員削減規模が10万人を超えおり、その4割をIT企業が占めています。しかし、IT企業を解雇された人の8割は3ヵ月以内に再就職できるということで、いわゆるスタートアップやDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進している企業に転職しています。
要するに、本格的にAIを導入するために、大量リストラが実施されていることがわかりました。当然、小売業や製造業、教育・医療業界、金融業などでも経費削減が始まり、日本も含め、業務効率促進の波が世界中で起きています。
米IT大手の大量解雇が「日本人の大リストラ」につながる怖い話
(出典:2023年1月10日 DIAMOND online)
「アメリカで起きたことが日本でも起きる」という格言通り、これから銀行の支店閉鎖が相次ぐものと考えられます。同時に、銀行員も大量に解雇されるので窓口業務がなくなり、ATM台数も減っていきます。
アメリカ国内の銀行の支店数は過去10年間で約20%減少しており、最近はメガバンクのJPモルガンチェース銀行やU.S.バンクウェルズ・ファーゴ銀行、U.S.バンク、そしてバンク・オブ・アメリカなどの支店が急激に姿を消しています。
今後、日銀が政策金利を上げた場合、日本の地方銀行も利益の減少から大規模な支店閉鎖に取りかかるかもしれません。様々な業種でも大量リストラを実施するのは間違いなく、これから暇を持て余す人たちが本当の意味での人生を楽しむようになるはずです。
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